え、いいの?
戸惑うわたしの耳に届いたのは、忌々しそうな舌打ち。
そりゃ気に入らないよね、と思ったら……
「どの言語でも構わナイが」
信じられないことに、日本語を使ってくれるみたい。
イントネーションはジェイより多少ぎこちないものの、さすが日本で会社を経営しているだけあって十分流暢だった。
「その恰好は、そいつにそそのかされたノダロウ。嘆かわしいことダ」
歓迎されてないこともすぐに伝わった。
「そんなわけ――」
「大体! 自分、何したか、わかってるノカ!」
早々に怒りが理性を上回ったのか、威厳たっぷりな仮面が剥がれ始める。
「なぜ連絡しない! 黙って姿を消シテ……! その間、シンガポールでドウイウ事態になっていたか、自分にナンの疑いがかかっていたか、わかってるノカ! SDまで動いたノだゾ!」
予想は当たってたみたい。
どうやら本当に、知らない間に何かが起こってたようだ。
「詳しくは知らないけど、来日の理由についての疑いは晴れるはずだ。父さんも観てくれただろ? あのABC音楽祭の映像を、ライアンに頼んで総帥へ送ってもらったから」
「おぉ……ティエンナ!」
偉平氏はそう叫ぶなり、額に手を当て天井を仰いだ。
雰囲気的に、ジーザス! って感じ?


