ドアの向こうはリビング、というより応接間って呼びたい雰囲気の部屋だった。
ものすごく広いんだけど、油絵から水墨画、花瓶から屏風までなんていうか……いろんな色味のものがごちゃごちゃと配置されてて、もったいないというか。
もう少しシンプルな方がいいんじゃ……って、ただの好みの違いだよね。
「〇×$%&#?」
聞き慣れない言葉が耳に飛び込んできて、急いで姿勢を正す。
わ、装飾品に気を取られて見逃してた。
だって黒一色のソファに黒のナイトガウン羽織って座ってるんだもん、一瞬目に入らなかったよ。
脳内で反省している間に、お父さんと同じ年くらいの男性がソファから立ち上がる。
「%#×&#○◎$%$?」
顔立ちは彫が深めの東南アジア系、身長はわたしとそれほど変わらないかな。
ただ、苛立たし気にジェイを睨む目は三白眼というやつで、威圧感がある。
そんなに似てる感じはしないけど、この人が李偉平氏だろう。
「このピアスと髪が気に入らないって? 穴開けたのはもう何年も前だけど。気づいてなかったのはあなたくらいだよ。それより父さん」
ジェイは相手の苛立ちをさらりと流し、わたしの背中に手を回した。
「オレの大切な人を紹介するよ。こちらが、結城栞さん。彼女は中国語使えないんだ。日本語で話してもいいだろ? 彼女にも聞いてもらいたいから」


