ついにルドルフさんが最奥のドア前で立ち止まった。
ここも観音開き。
真ん中から開くやつ。
あっという間にジェイのお父さんとご対面だ。
今の心境を言葉にするなら、恋人の家族に会うっていうよりむしろ、ラスボスとの対決、って方がしっくりくる感じだろうか。
な、なんかドキドキしてきた……。
一緒に来てほしいって言われてのこのこついてきちゃったけど、場違いじゃないかな? 相手は社長さんだよね?
どうしよう、お前なんかお呼びじゃないって、住む世界が違うとか言われたら……
ぐるぐる考えていると、ふいに。
頭の上に、ポン、と手の重みを感じた。
「え?」
視線を上げ――無言の、けれど優しい眼差しを見つけて、ドキッとした。
急に不安になっちゃったこと、気づかれてたみたい。
ジェイだって緊張してるはずなのに……
わたしは深呼吸して、返事代わりに小さく頷いた。
そうだよ。
わたしは、一人じゃない。
一人じゃないんだ。
コンコン
ルドルフさんがドアをノックする。
<ジェシー様とお連れ様がいらっしゃいました>
《入れ》
しゃがれた英語が聞こえて――コクッと、喉が鳴った。


