「ガイド?」
「そ、そうっ。実は彼氏に約束ドタキャンされちゃって。あ、ドタキャンっていうのは――」
「大丈夫、意味はわかる」
少しは興味を引けたらしいとその表情から読み取って、俄然勢いづく。
「あ、はい。それで、ぽっかり時間できちゃって。なんか寂しいなーって」
同じ事務所のモデル、中条瑠衣の18番!
あざとカワイイ、上目遣い。
莉緒役やるって決まった時に散々観察したんだよね。
実地でどこまで効果があるかわかんないけど……と思ったら、驚くことにちゃんと通じたようだ。
ふっとどこか蠱惑的な微笑を浮かべた彼が、
「オレの顔、気に入った?」
なんて聞いてきたから。
「はい、すっごく」
これは本当。
素直に、コクリと頷く。
「へぇ、日本の女の子って、もっとシャイなのかと思ってた」
楽しそうに肩をすくめると、その長身がぐっと距離を詰めてくる。
反射的に後ずさって――ビールケースの壁に背中がぶつかった。


