「バカか、お前はっ!!」

「すいませんっ!!」


身長はそんなに変わらないくせに、それでも馬淵さんはやっぱり男だった。
圧倒的な力の差で、わたしはあっという間に元いた部屋に逆戻り。

両手首を頭上に上げた状態のままネクタイで縛られ、口にハンカチを詰め込まれ、ベッドに転がされてる。

「彼女は女優だ! 本気で騙されるヤツがいるか!」

「でも、ほんとにヤバかったんです! マジで死ぬんじゃないかって……」

「当たり前だ。栞の被害者役は折り紙付きなんだよ。犯人役が、カメラ回ってる前でほんとに殺しちゃったって泣き出したことだってある」

「ええーマジすか……」


「ったく、ほんとに使えない奴だな」

吐き捨てるように言ってから、「……しおりーん」と馬淵さんはじっとり、湿った声でわたしを呼んだ。

「あんまり聞き分けのないことやってると、ちょっとひどくしちゃうかもしれないぞぉ?」

ベッドに腰かけ、わたしを上から見下ろす。
顔をそむけたけど、顎をつかまれてしまい、強制的に視線がぶつかった。

「初めてなんだから、優しくしてほしいだろ? ん?」