「このアプリを入れておくと、おもしろいんですよ。相手の現在地、着信履歴、保存データ……とかね、いろんなことがわかります」

「……違法なことをされてるって、自覚はあります?」

咎めるように言うと、くすっと小さく彼の肩が揺れた。

「容疑者の逃走を手助けするのは、日本では合法なんですか?」

「な……っ」

言い返そうとした潤子を、伸ばした手が遮る。
その顔に、もう笑みはなかった。

「やめましょう、ごちゃごちゃとめんどくさいことは。日本語で言う……そう、“腹を割って”話しませんか」

「どういうことでしょう」

「僕が言いたいのはこういうことです。こちらは、すでに彼が日本についてからの行動を把握している。彼が誰と連絡を取っていたかも。……現物がここにありますから、手っ取り早くこの場で確かめてみましょうか」

潤子が見守る前で、ライアンはジェイのスマホを手に取った。

「例えば、彼が最後に電話をかけた相手は誰か――」
言いながら、指先で画面をタップする。

「…………」

2人の間に沈黙が落ち、店内のざわめきのみが響いた。