お、落ち……?

え? どういうこと?

あっさり放した両手をバンザイするみたいに挙げた彼は、眉を寄せるわたしへ、CMに使えちゃいそうなパーフェクトなウィンクを寄越す。

無意識に、「げ」、って漏らしてた。

つまり……今のってナンパ、みたいな?
そういうこと?

気づくなり、かぁっと全身が赤くなるようだった。

単なるチャラ男か。
ま、真面目に考えて損した……。

どこかで会ったことあるよね、なんてド定番じゃない。
そんなありがちな文句に引っかかるなんて……何やってんの。

両頬を手で押さえて、ジト目になっちゃった。
対照的に黒髪を揺らして楽し気に微笑んだ彼は、大きな手を伸ばしてわたしの頭をポンポン。

「早く出れば? 電話、切れちゃうよ」

「へ? あ、えと……はい」

そうだった、と地面に置きっぱなしにしてたかごバックから、鳴り続けるスマホをあたふた取り出す。
それがマネージャーからの着信であることを確かめ、再び顔を上げた時にはもう、そのスラリとした後姿はドアの向こうに消えるところだった。

な、なにアレ……
変な人、だったな……。