本当のことを言うと……

ラブホテルの部屋を飛び出してからずっと、ジェイにスキャンダルはデマなのかって言われてからずっと、頭のどこかに“予感”がある。
それはチカチカ、意識の底に見え隠れする映像で……登場するのはお母さんとわたし、そして須藤さんだ。


――ねーお母さん、須藤さん見なかっ……あれ、こんなとこにいたの?

――あら、栞ちゃん。
――ごめんごめん、今行くよ。


飛びのくように離れた2人……


――打ち合わせって、ほんとにわたし、行かなくていいの?

――大丈夫。お母さんと須藤さんでやっておくから。栞ちゃんは、一人でダンスレッスン行けるわね?

――うん、大丈夫だよ。


夕暮れの街に消えた2つの影……


お母さんの、須藤さんの、
お互いを見つめる眼差し、笑顔と、仕草と、2人の距離――……



「ねえ、あなた、今朝宮本さんの所にいたでしょう?」


突然。
高原を吹き抜ける風のような、重苦しい空気を払う涼やかな声がした。