ど、どうしよう、やっぱり同業者?
アメリカ、ってことは……ハリウッド?

いや、ないない! わたしの顔がそこまで売れてる、とか絶対あり得ない。
海外配信されるようなドラマに出たこともないし。

きっと、いや絶対、彼の気のせいだ。
うん、そうに決まってる。

「えっと……誰かと間違えてません? 最近ハーフのタレントさんっていっぱいいるし、よく言われるんですよねっ、そういうこと」

若干上ずった声に、どうか気づかないでと祈りつつ、なんとかポーカーフェイスをキープ。

そこで、カシャン、て軽い音が聞こえた。

気が付けば、彼の両手はわたしを囲うように両脇の柵を掴んでいて……
瞬く間に壁ドン、ならぬ柵ドン(?)みたいな態勢が出来上がり、あっけにとられる。
ぇえっと……これは一体、何?

「……あ、の?」

「最近じゃなくて、もっと昔の話」

「む、昔……?」

「そう、昔」

意味ありげに紡がれるそのセリフに、なぜか微糖が含まれているように感じてしまうのは……
完璧なラインを描く、セクシーな唇のせい?

ドギマギしながら視線を上げていくと、こっちを見下ろす眼差しと宙でまともにぶつかって、心臓がバクン、てひと際大きく揺れる。

騒々しい周りの音がスッと遠のくような心地がして、視線が囚われたまま動かせなくなった。