遮るように言って、豹のようにしなやかな動きで近づいたのは、お化け屋敷の前でぶつかった、あの白人の男だ。
手に持った何かをヒラヒラ振っている。

「気づかれてたみたいだ。ベンチに置きっぱなしになってた」

「なっ……あいつのスマホっ? あぁくそっ! また振り出しかよっ!」

茶髪男は頭をぐしゃしゃにかき回し、空を仰ぐ。
3人はさらに身体を小さくして、恐縮している様子だ。

「しかももう、俺たちが追ってるってバレてるんだろ。振り出しよりもっと悪くなってるじゃねえか! だから言ったんだ、早く捕まえとけって!」

どうやら想定外のことが起きたらしい。

一体彼らは何者だ?
目的は何だろう?

大いに興味をそそられるし、ユウたちの行方も気になるところではある。

だが……

「それほど最悪な状況じゃないよ。むしろ、これを利用すればいい」と慰めるように話す金髪男から視線を剥がし、手元の腕時計を見下ろした。


今、自分がすべきことは別にある。

先ほど、依頼主(・・・)から2度目の指示が入ったからだ。