あぁたぶん、わかった、と思う。

確かに彼が望んでいるのは、友達じゃない。
友達じゃ、こんなことできないもんね?

彼が欲しいのは、椿さんの代役。
彼女の代わりに抱きしめてキスできる相手……


「ユウ、何を考えてる? ちゃんとオレを見て」

焦れたみたいなバリトンボイスに強請られて、胸が切なくきしんだ。

微かに持ち上げた瞼。
視界いっぱいに、男の顔をしたジェイが映る。
余裕がないみたいに見えるのは、わたしの都合のいい錯覚だろう。

彼が見つめるのも、こうしてキスするのも、わたしだけだったらいいのに。
彼が、わたしだけのものだったら――

胸の内にぶわりと、黒い霧のようなものが広がっていく。
さっき、小坂さんとジェイとのツーショットを見た時にも感じた、それ。

この気持ちを何て呼ぶのか、靄のかかった頭の中を探ろうとしたけど、


「ん、んん……」

こっちの思惑に関係なく、キスはさらに深まっていく。

結局、そのまま地上に着くまでの間ずっと、他のことを考える暇なんてもらえなかった。