好き……?


「ユウ?」

「そっ、そうね。うん。……っていうか、わたしそれしかできないから。成績もよくないし、他に特技もないしっ……つまんないヤツでしょ、あははっ」


好き?


混乱する自分を誤魔化すように引きつり気味に口角を持ち上げながら、心の中でまた繰り返す。


好き?

え……やだな、なんで疑問形なの?
好きに決まってるじゃない。

笑おうとしたけど、掠れた音が喉の奥で鳴っただけだった。


「それしかできないってことはないと思うけど……でも、ユウの人生だもんな。オレは応援するよ」

「うっうん、ありがとう」

ぽっかり心の中に空いた真っ黒な穴から目を背けるようにして、へらっと笑顔を取り繕って。
「じゃあ次、どこ行こっか」なんて、足を前に出したんだけど――、踏んだそばから地面がホロホロって崩れていくみたいな、奇妙な感覚を味わっていた。


女優(仕事)が好きか、って?

そりゃ……じっくり考えたことは、なかったかもしれない。

赤ちゃんの頃から馴染んでる世界だもん。
あまりにも当たり前のことだから、敢えて考える必要がなかっただけ。