♡恋々愛side♡
校庭の満開の桜が春風に揺れる、４月初旬。
「ふぅ……」
そんな桜を見る余裕もない私は、ひたすら深呼吸を繰り返していた。
待機場所として案内された部屋で、担任の先生が迎えに来るのを待つこと１０分。
今日は人生初の転校初日だ。
あぁ、ドキドキが止まらない……。
何度深呼吸をしても、全然心の準備はできないままで。
クラスに馴染めるか、友達ができるか、そもそも最初の挨拶がうまくできるか……。
色々心配しだしたらキリがなくて、不安も募るばかり。
クラスに気の合う女の子がいるといいな……。
－コンコンッ。
－ガタガタッ！
深呼吸に全集中していた私は、突然のノック音にビクッと肩を揺らして反射的にイスから立ち上がる。
－ガチャ……。
「失礼します」
その言葉とともに扉を開け、スタスタと部屋に入ってきたのはキレイな女の人。
「あなたが桜川恋々愛さんね。はじめまして。担任の藤崎菜摘です」
先生はそう軽く自己紹介をすると、私にニコッと微笑みかけた。
整った顔、引き締まったスタイル、スラーッと長い手足、ゆるく巻かれて結われたミルクティー色のロングヘア……。
モデルさんにしか見えない……。
「桜川、恋々愛です。よろしくお願いします……！」
先生のキレイさに緊張して言葉を詰まらせながらも、なんとか挨拶を返して深々と頭を下げる。
そんな私に、藤崎先生は「よろしくね」と柔らかく笑ってくれて。
その笑顔に、私の緊張も少し緩んだ。
優しそうな先生でよかった……。
とりあえず一安心。
