「響くん!?」

「河本!?」

河本樹(こうもといつき)は、響と同じ大学に通いサークルも同じである。たまに一緒にランチを食べたりする中だ。

そのことを「知り合い?」と首を傾げる千春たちに言い、響は樹に座るように言う。樹が座ってから各々食べたいものや飲みたいものを頼み、話が始まった。樹は自身の体の性別と心の性別が一致しないことを話し、冬斗が口を開く。

「俺たちは、性的マイノリティを抱えた人間が集まって活動してる歌い手グループだ。君のヴィランを聞いて、声に惹かれた。ぜひうちのグループの新メンバーになってほしいと思ってる」

冬斗がそう言うと、樹は「そんなこと……」と頬を赤く染めながら照れる。しかし、その顔はすぐに暗いものに変わってしまうのだ。

「どうしたの?」

千春が訊ねると、「僕は、皆さんのように自分を出していく勇気がないんです」と樹は話し始めた。

「僕の親は、こういうの理解してくれるとは言い難くて……。「男なんだから」って口癖のように言われて……。だから、せめてネットの世界だけでも女の子にーーー心の底から望む性別になりたいと思っていたのに、怖くて……。僕、僕はーーー」