住宅街にある一軒の大きな家、ここが大学生の降谷響(ふるやひびき)の家だ。二階建ての庭付きの家で、友達数人とシェアハウスをしている。

「んん〜……。今日も学校に行かないとな……」

あくびをし、眠い目を擦りながら響は鏡の前に立つ。髪型や着ているパジャマは男性のもの。しかし、体は丸みを帯びていた。響は体は女性だが、心は男性という性同一性障害だ。響は今、男性として暮らしている。そしてある活動をしている。

Tシャツとスキニーパンツを履き、響が一階のリビングに降りると、ふわりといい匂いが漂っていた。

「おはよう!」

響が挨拶をすると、「おはよう」とリビングにいた全員が返してくれる。みんな響にとって家族のような存在で、大切な人たちだ。そして、響のような性的マイノリティを抱えている。

「そこで突っ立ってないでさっさと座れ。今日も大学だろ」

そう言いながらテーブルにできあがった朝ご飯を並べていくのは、安西冬斗(あんざいふゆと)。会社員として働いている。彼は両性愛者だ。