下弦の月*side story*

えっ?






驚きのあまり、顔をやっと上げると今度は鼻先に唇が触れて。







もう一度、額に唇をくっ付けて離れてしまった。








少しだけ期待していたのかもしれない。







キスをしてくれるんじゃないかって……







でも今は、これでいい。







こうして土方さんと同じものを見て、





二人で夜風に当たりながら、過ごす穏やかで、






私にとったら最高の時間だから。







今まで、嫌いだった自分の名前も好きな人に、





合ってるって言われると恥ずかしいながらも、好きになれるんだって教えてくれた。






ありがとう、土方さん。








たぶん、そのまま口にしてしまったんだろう。







「なにがだ?」






と、訊き返されて。







「…名前です。好きになれました。」







そうか、と言って引き寄せる手に力が込められた。








今夜ほど、時が止まって欲しいと願った夜はないかもしれない。








土方さんの俳句集の中で、私が一番好きな句が頭を過った。






それは、大好きだから覚えていた句。






『白牡丹月夜月夜に染めてほし』








どういう気持ちで、浮かんだのですか?







いつか訊ける時は来るんだろうか………









☆END☆