《総司》



「八重さん、みんなは今、何処で戦ってるのかな?」





僕の看病してくれている八重さんに。




何気なく聞いてみる。






「どこでしょうね。斎藤さんは土方さんより先に会津に向かったみたいですよ。」






たぶん、知っているだろう今の戦況を僕に隠そうとする。







僕が、まだ刀を持つことを諦めていないからだ、と察しはつくけれど。





今の自分が情けなくて、辛くて、苦しい。





京へ旅立つ前に、誓った想いは病のせいで叶わず。




ただ、床に伏せって咳き込んで……血を吐き続けて……







「そう。僕は…まだ戦えるのに…」





なんて、言いながらまた血を吐く。





そんな僕を、呆れる様子も見せずに。



背中を擦りながら、





「まだ無理ですね、皆さんとの合流は。」





耳元に女らしい細い声が響いて、溜め息が溢れた。




僕は、この声が好きだ。




声だけじゃない、二重の大きな瞳も。




背中を擦ってくれる品やかな女らしい手も。





今でも、八重さんには伝えていない真実。





僕と土方さんしか知らない真実。





八重さんの同行をお願いしたのは僕なんだよ。







幸せにしてあげれないし、守ってあげれないけれど。




八重さんには側に居て欲しかったんだ。







でも……もうすぐ、僕は居れなくなるから。




心配だから。




八重さんの背中を押してあげなきゃいけないんだ。








僕は、八重さんを一くんが迎えに来るまで生きていられるかな?




せめて、皆との合流が叶わないなら八重さんが幸せな笑顔で、



僕の側から離れていく姿をみたいんだ。






僕が大好きな君にしてあげられる、ありがとうの精一杯の気持ちなんだ。