「じゃあ、冬院さん。タイム測ろっか」
坂梛さんの言葉に
首を傾げる。
「最初にタイム測っとけば、練習したあとで、どれくらい速くなったかが分かるでしょ?」
と笑う彼女の手には
ちゃっかりとタイマーが
握られている。
なるほど。確かにそうだ。
坂梛さんの指示のもと
ごく一般的な50メートルの
タイム測定をした。
結果 “10.38“
「おっそ。信じられない…50メートル10秒代の人、俺初めて会ったよ。」
貶しながら哀れむように
見る帝に若干のイラつきを
感じるが、あえて何も言わない。
ちなみに坂梛さんも測って
6秒代という記録を叩き出していた。
「うん、少しは坂梛さんを見習ったらどうかな?」
イラッ
「黙れ、じゃあお前も測ってみろ。」
「いいけど? 別に。」
こいつの脚が速いことぐらいは
知っているが、貶されっぱなしは
ムカつくから対抗する。
そんなことをしても
虚しくなるのは私だというのに……

