恋歌-Renka-




そんな琴乃ちゃんを
素直に可愛いと思った。



近くのレストランで
一緒に昼食をとり



かつて俺と花音が住んでいた
マンションまで送ってもらった。



花音はもういないけど
何だか思い出を手放せなくて
今もまだ、そこに住んでいる……。



そして、その近所の広場



初めて琴乃ちゃんに出会った
この場所のベンチに



再び2人で腰を下ろした。



暫くの沈黙の後
先に口を開いたのは俺で



「俺たち……2人とも恋が成就しなかったね」



無意識にそんな言葉が
口をついて出てきた



すると琴乃ちゃんは
フッと笑って



「私もそれ思いました」


小さく呟く。



だけど、彼女はしっかりと
前を見据えるとハッキリした
力強い声で



「だけど、あの2人を幸せにすることはできました。亡くなってしまったけれど、きっとあの結婚式は2人にとって一生に一度の幸せな時間になったと思います。」



今度は明るく笑ってみせる琴乃ちゃん。



本当に……君は強いな
俺も見習わなくてはいけない。



「そうだね」



俺も今度こそ前を向いて
歩き出さなきゃ……



まずは、引っ越そう。