恋歌-Renka-





戸惑いと気まずさと
いろんな感情が混ざりあって
俺は電話に出れずにいた。





しかし、何度もなる携帯






こんなにかかってくるって………
何か重要な話があるのか?





そう思い………………





ついに通話ボタンを押す。





「………もしもし」





恐る恐る声を発して
琴乃の反応を伺う





「良かった!出てくれた!」





ホッとしたような声で
いう琴乃に思わず笑みが
溢れるーーーーーー






正直、琴乃は
俺の顔なんて見たくないし
声も聞きたくないんじゃないかな
って思ってたから





普通に電話きて
普通に対応してくれて
かなり嬉しい。





でも、それが花音だったら
って思ってしまう俺は
やっぱり最低なのか?




「どうしたの?」





でも、彼女のおかげで
緊張がとれたのか





さっきまで震えてた手も声も
今はもう震えてない。





しかし、彼女の次の一言で
俺の体は一瞬にして硬直する






「あのね、私………黙ってたことがあるの」






黙ってたって何?
酷く嫌な予感がする




「実はね…………花音さん病気なんだよ」





ほらやっぱり。予感は適中






病気だなんて…………そんな。






嘘だろ??





「だからね…………」





何も言えずにいる俺に
さらに言葉を続ける琴乃





「花音さんが涼太を突き放したのにはちゃんと理由があったんだと私は思う。病気の花音さんが涼太のもとに帰れば、いずれ貴方に"最愛の人を亡くす"という深い悲しみや絶望を味あわせることになる」






そんな……………
俺のために?
自分は傷ついても
平気だっていうの?





いいや、花音は昔から
そういう奴だった。





何してんだ俺…………
5年間も花音を待ってて
花音を好きだとかほざいて
彼女の本心にさえ
気づけなかったって
言うのかよ……………





あんな最低なこと言って
今すごく自分という男を
殺してやりたい気分。





「何で、私………こんな大事なこと………もっと早く言わなかったんだろう?」






急に電話越しに
泣き始める琴乃





「ど、どうした?」





「どうしよう…………花音さんが死んじゃう………」






しかしそんな琴乃の言葉で
今がとても最悪な事態だって事は
バカな俺にでもすぐわかった。






「琴乃!!今、どこにいる!?」





「○○病院」





それだけ聞いて
電話を切り
その場から
走り出したーーーーーー