恋歌-Renka-




「いっとくけど琴乃は、そんな単純な女じゃねーよ」





「そうか?単純そうだけどな」





うーんと首をうねりながら
考える素振りを見せる准弥。






正直、今俺は
准弥の相手をしてるほど
心に余裕がない





今度からは花音を
忘れる努力をしなきゃ
いけない…………





その為には仕事に
明け暮れるしか道はないんだ。






「さて、これを片付けたら今日は終わりだ。」





隣でごちゃごちゃ煩い
准弥を無視して
今日、最後の仕事に
取りかかる





「あ、涼太」




「…………………」





「おい!」




「…………………」





「涼太!!」






「何だよ?喋ってる暇があるなら、お前も手伝えよ!」





あまりにも煩い准弥に
イラついた俺は
少し強めな口調で
いい放つ






しかし奴はそんなこと
お構いなしに





「Kanonってアーティスト知ってる?」






別の質問を投げ掛けてくる。






忘れようとしてたのに…………
余計なこと言うなよ





「知らない」






「なんだ、知らんのか!あの子の新曲の恋歌-Renka-って、すげー良い曲なんだよ!でも、引退するんだってさー、ブレイク真っ只中なのにもったいないよ本当。」






「ふーん、そうなんだ」





と残念な顔をして
話す准弥に冷静な対応を
試みる俺





でも、内心






引退という言葉に
なんだか無償に嫌な予感がした。






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半日の仕事は無事終了し
准弥と別れて家に帰る途中





~♪~♪~♪~♪~♪





俺の携帯が鳴り響く。





ディスプレイを確認して
表示された名前に焦る





"琴乃"





ーーーーーーーーーなんで?