恋歌-Renka-




「今日……道中で涼太を見たわ」



静かな車内で突然
彼女の呟きが響く



その名前にドクンと
尋常じゃないくらい
脈がはやくなって



「そ、そうなんだ」



少し、声がどもってしまう。



「可愛らしい女の子と一緒にファミレスに入っていったわ。とても元気そうだった……」



助手席に座る彼女の瞳から
涙が溢れ出す……



その姿を見るのが辛くて
俺は目を背けた。



「会いに行かないの?」



率直な疑問をぶつける



「遙……あなた随分と変わったわね。」



「そ、そう?」



多分……俺が変わったんだとしたら
それは間違いなく君のおかげ



「ええ。」




「もう、随分と前から思ってたことだけど……。ってか、今更こんなこと言うのもアレだけど……俺は花音が幸せになる道を選んで欲しい」



「ふふっ。遙らしくないわね……。だけど、ありがとう。でも、私……涼太には会わないわ」




「は?なんで?」



花音の口から出た驚きの言葉に
思わず車を道の脇に止める



「これは最初に病気になった時から考えていた事よ、だからあの曲を書いたの。それに……またなんとなく再発するような気がしていたから」



そう言って涙が乾ききっていない
瞳を伏せると悲しげに笑う……。



あぁ……君にそんな思いさせてるのも
君が幸せな道を選べないのも



全部全部……あの時の幼稚な俺が
君の人生を狂わせてしまったからだ……。