高校2年生になったある日



孝さんは



「婚約者に会いに行くぞ」



一言だけそう言うと
俺の返事も聞かぬまま
強制的に車に乗せる



正直、何もかも興味なくて
あの会社を手に入れられるなら
たとえ父の道具だとしても
それで良かった。



婚約者については、ある程度
聞かされていた



孝さんの実の娘で
俺と同い年の女の子



冬院 花音



一度だけ写真でみたその子は
とても美しい容姿で可憐って
言葉がしっくりくる



だけど孝さんは、その子の親権を
奪い取って自分が父になるから
俺の養子縁組は取り消すと言った。



俺が跡取り用の道具だと
言わんばかりの無慈悲さに
死ぬほど腹が立った


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見たことも無い知らない街で
初めて婚約者に会う



遠くからでもすぐわかる
その一際目立つ容姿



その隣には同じように
容姿の整った男がいて



幸せそうに寄り添い歩く
2人に心底嫉妬した。



好きな相手と笑いあえて
幸せそうに笑う彼女が
憎くて憎くて……



だから父の目的とか
そんなこと関係なく



ぶっ壊してやりたくなったんだーーー。