花音の声でガラの悪い
中学生たちが一斉に振り返る




俺の頭からはいつの間にか
助けるという選択肢が消えていて




無我夢中で走り出した。




俺は逃げ出したんだ……




計り知れない程の恐怖に
押し殺されて……。




そして気づけば




あの日助けられた公園まで
来ていて……足を止め




たくさん泣いた。




あの日彼女はあんなに
逞しく俺を助けてくれたのに
俺は彼女の為に何もして
あげられなかった………




悔しさと自分に対しての
怒りが込み上げる。



情けない男だ



本当に…………。




そして俺は彼女のもとには
行かなくなった。




どんな面下げて行ったらいいのか
分からなくて……




俺は彼女との縁を
自分勝手に絶ち切った。




日々は無情にも去っていくのに
彼女のことが忘れられないままの俺。




そして中学生になったとき
それが恋なんだと気づいた。



気づいた途端に溢れ出した
感情は暴走するばかりで




俺はついに意を決して
彼女に会いに行った。



どの面下げて来たの?
なんて言われたらどうしよう



とか



顔も見たくない



とか言われたらどうしよう




なーんてネガティブな
思考を張り巡らせて
彼女の家へ向かった。



しかし



そこに花音はいなかった。




近所の人に聞いても
「引っ越した」としか言わない。




俺は沈んだ気持ちで
仕方なくその場を後にした。




もう……忘れよう



そう何度も思ったが
俺の恋心は全然止まらない




それどころか
居ない相手を想いながら
日に日に好きが積もって
いくばかりで………



中学校2年生になったある日
引っ越しの話が舞い込んできた。