《土方 歳三》


新政府軍が、ついに箱館の総攻撃を始めた。






月香は、撃ち込まれる防弾に怯えながらも……




懸命に怪我人の世話をしていた。




その姿があまりに、甲斐甲斐しくて……




帰れ、と言いたくなったが……聞かないだろうと思い、何も言わずにいた。








「鉄之助さんが、日野に向かわれましたよ。」







五稜郭の防衛をしていた俺に、そう月香が伝えてくれた。







その、数日後ーーー。





弁天台場が敵に囲まれた。という報せが入り、







月香に、





「弁天台場が敵に包囲された。島田が孤立してる。援護に行ってくる。」






そう、告げると……切なそうな顔をした月香の頭を撫でて、





額に、頬に、唇に口付けをすると、







「行ってらっしゃい。」







笑顔で、見送りの言葉をくれた。






あの切なそう顔を見て、




俺が死ぬのは今日なんだと…悟った。





いつ死んでも不思議ではない所にいたせいか、




死なんて恐れちゃいなかった。





だが、今は……死が恐く感じる。






それでも、行かなくてはいけない。






自分で選んだ道だ、この信念だけは曲げられない。






籠城戦なんて…しねぇ。