声を駆けずに部屋に入ったせいで、





土方さんは険しい顔をしたが、私の顔を見るなり。






優しい顔になって。






髪を結おうとしていた手を止めて、





私を抱き締めてくれた。










「平助のこと…だろ?」







すぐに察してくれていたから、大きく頷くと。







「お前は仲が良かったからな。寂しいんだろ?泣けばいい。」







その言葉を合図に土方さんの胸で、





声を上げて泣いた。








「また…会えますか?」






会えないのはわかっている、それでも…




土方さんの口から聞きたかった。







「ああ、会える。生きていれば必ずな。」






そう、この慰めの言葉を。








「はい…すいません、いきなり。」






「気にするなって言いたいが…詫びに髪を結ってくれるか?」







落ち着いたと見た私に、そう言って抱き締めていた腕を解くと。




懐から結い紐を取り出して、手渡した。








髪を結い終わってから、土方さんにお茶を持って行くと。






すでに仕事を始めていた、土方さんは……







「近いうちに、また屯所を移転するかもしれねぇ。その時はまた頼むな。」







はい。





頷いた私に、土方さんは微笑んで。






頭を撫でてくれた。






私が土方さんを必要としているように、




土方さんも私を必要としてくれているような気がして、





少しだけ、心が落ち着きを取り戻していた。