下弦の月

西本願寺の裏手の桜の木を、



二人で見上げている。





一足遅かったようで、葉桜も混じっているけれど。




花びらがヒラヒラと舞い散っていて綺麗。








「満開の桜より、俺は散り際が好きだな。」






「私も…散り際がいいな…」






ああ、と相槌をうってくれた柊輔さんの長い指が私の髪に触れた。






「花びら、着いてた。」





指の先に着いた花びらを見せながら、




微笑む柊輔さんの上にも花びらが舞っていて。




柊輔さんの髪にも花びらが落ちた。






「柊輔さんの髪にも…」





「取ってくれよ。」





屈んでくれた柊輔さんの髪の花びらを取ると、




スッと体制を元に戻して、抱き締められていた。








「なあ…月香…昨日、俺に惚れ直したって言ってくれたよな?」






抱き締められたまま、胸で頷くと。




髪を梳きながら。






「すげぇ嬉かった。ずっとお前は、健吾を振った事に申し訳なさを感じてるって気付いてたから。仕事中に仲良くしてるお前らを見て、柄にもなく嫉妬もしたからな。」





気付いてたんだ……



だったら、言ってくれたらよかったのに……