下弦の月

「お前が、全部言ってくれてスッキリしたよ。少しは、効果あるだろうな。」






「そうですね。部長を鬼みたいだとか思ってましたけど、尊敬はしてました。素敵です。」






「一言多いんだよ、佐藤。」






鼻で笑った柊輔さんは、顔をほんのり染めながら煙草に火を点けた。







「俺さ…月香を振ってから後悔してたから、久しぶりに再会した時は嬉かった。今度こそ、幸せにしようって…だけど月香は柊輔の女になってた。悔しくて、いっつもお前には敵わなかったからな。意地でもって躍起になってたんだ。また振られた時は、かなり落ち込んだ。でも、月香は柊輔となら大丈夫だって思ってる。さっきの話を聞いて、任せられるって。」







健ちゃんの言葉に、ずっとあった申し訳なさが抜けていた。




柊輔さんは、煙草の火を灰皿で揉み消して。




フッと笑った。







「任せとけ、幸せにするから。健吾には、今…佐藤が居るんだ。ちゃんと幸せにしてやれよ。」







と、肩を叩いた。






「当たり前だろ。栞は、まだ月香を好きでもいいからって俺に告白してくれた。それに甘えて、忘れるための道具として見てた部分もあったけどな…頑張ってる栞を見て少しずつ惚れ始めたんだ。」








真ん丸な瞳を潤ませている栞ちゃんに、






「よかったね。健ちゃんを宜しくね。」






頭を撫でて、そう言うと小さく頷いた。









居酒屋で、幹事の栞ちゃんがお会計を済ませて。






柊輔さんの家に帰った。