デスクに突っ伏したまま、



知らない間に寝てしまっていたらしい。





ブラインドの隙間から、



昇り始めたばかりの朝焼けが注いでいる。






顔をゆっくり上げようとした時、




肩に違和感を感じて、手を伸ばすと。





大好きな香水と煙草の香りが鼻を掠めた。





このスーツの上着、柊輔さんのだ。






いつの間に……?





辺りを見回しても、その姿はなかったのは当たり前なんだけど。





デスクの上に置かれた携帯が、点滅していて。





確認すれば、





『話がしたい。明日、時間を作ってくれ。ちゃんと帰ってから出直して来いよ。』






柊輔さんからのメール、心臓がドクッと跳ねた。






まさか……健ちゃんとのキス見られてた?





私があの現場を見てたのに気付いてた?






ちゃんと、お互いに誤解を解かなければ……





その思いで、柊輔さんのスーツの上着を抱き締めていた。




一度、家に帰って用意してまた出勤して直ぐに。




喫煙室を覗くと、柊輔さんの姿があった。





私に気付いて、手招きされて中に足を伸ばすと。






「今日は、早めに仕事を終わらせる。お前も残業はしなくていい、だから俺の家で待ってろ?」







「うん…わかった…」







頭を撫でてくれた手は、いつもと変わらず優しくて。




誰が来るかも、通り過ぎるかもわからない喫煙室で。




柊輔さんの胸に身を預けると、煙草を灰皿に落として。





優しく包み込んでくれた。






頭上から、






「…月香…好きだ…」






穏やかな温かい声音が、降り注いで。




不安が少しだけ消えて行くのを感じた。









だけど、この日は急な商談が柊輔さんに舞い込み。




私も急遽、本社に行く事になり。




約束は、あっさりと流れた。