今日は、取引先の大学病院の院長との接待があって。




散々、太股や肩を触られて気持ち悪くて。




早く帰りたい、と願った接待が終わった頃には……終電はなくなっていて。




タクシーで帰ろうとしたが、携帯を会社に忘れて来てしまって。





会社に戻ると、営業部内から灯りが漏れていた。





その灯りは部長のデスクからだった。







「お疲れ様です。」





「水上も…接待だったんだろ?お疲れ。にしても…こんな時間にどうしたんだ?」





「はい…携帯を忘れてしまって…部長こそ遅くまで…仕事してたんですか…早く帰って休んで下さいね。」





「そうか…ありがとな。」





「いえ…それでは…失礼します。」





頭を下げて、デスクに置きっぱなしだった携帯を持って…背中を向けると。









「ちょっと待て!」





部長の声に呼び止められて、振り返る。





「もう終電もねぇだろ?送ってくよ。」





「大丈夫です、タクシーで帰るので。」





「すぐに捕まればいいが、捕まらなかったら…どうするつもりだ?」





断るなよ、と言いた気な瞳に捕らわれて。




「お願いします。」




って言えば、





納得したように、微笑んで。







パソコンの電源を落として、自分の鞄を持って。





デスクの灯りを切って、






部内を出て行く背中を追い掛けた。