「やっぱり、京都はいいよね。」


「うん、最高!」


来年には、四年生になるためゼミで忙しくなるから。と、

同じ大学の史学科に通う、友人の橘 彩芽と京都に遊びに来ている。


着物レンタルサロンで、着付けをしてもらって。


胸まである髪を簡単にヘアアレンジして貰って、

まるで、私の大好きな時代=幕末の京へタイムスリップしたみたい。




「なんか、私も彩芽も髪を結ってるのに簪ないのは勿体ないよね?」


「そうだね、買っちゃおうか?」



お互いに、視線を合わせて頷いてから。


たくさんの店を見て回っていると、


少し古ぼけた古道具屋の店先に並んでいた、銀の簪がキラッと光って。


導かれるように、私はその古道具屋の店先に足を向けていた。



「ちょっと!月香、待って!」



後を追い掛けて来た彩芽に、




「この簪、綺麗。」



手に取って、彩芽に見せる。



「本当だ、先端に三日月が着いてるよ。なんか月香にピッタリだね。」



「そうかな…私、この簪に呼ばれた気がしたの。これ、買う!」




微笑んでくれた、彩芽を店先に残して。


古道具屋の中に入って、お会計を済ませて。



「今、着けてくので。」



お釣りを渡してくれたお婆さんが、


ありがとう。と微笑んで。




「きっと、娘さんに似合うよ。」



そう、言ってくれた。


店先で待つ、彩芽の元へ向かって。




「お待たせ。早速、着けてみるね。」




と、店先にあった小さな鏡を見ながら

簪を挿した瞬間ーーー、

鏡に映った簪が眩しいくらいの光を放ち、

眩しさのあまり、眼を閉じると体がグラッと揺れる感覚がして。


意識が遠退いていった。



横に立っていた、彩芽が私を呼ぶ声が。


薄れていく、意識の中で聞こえた気がした。