美輪のフォローは、本城さんに任せるとして、問題は兵頭さんだ。
あれ以来、彼女との接点はまったくないんだけど。あの程度の牽制で、彼女がひいてくれれば、それはそれで万々歳。
だけど、それはうちの事務所が把握するより先に、雑誌に掲載された。
この前の病院へのお見舞いが、記事になったのだ。
もう、美輪の可愛らしい胸を痛める様なことは、やめて欲しい。
しかも、『交際継続中』って何。
もう映画の公開も終わってるし、これ以上、彼女とは関わりたくなんだけど。
「寺沢さん、これ、知らなかったの?」
事務所の中で、けだるげに雑誌を持ち上げ問い詰める。
「あぁ。わかってたけど、今は兵頭さんへの攻撃の犯人を捕まえることのほうが急ぎだからな」
いや。いやいや、僕の人生もかかってるんですけど。
マジで、美輪のほうが大事だし。
「阿川も了解済みだし」
――まぁね。僕よりも先輩のほうが大事ですよね。事務所的に。
でも。年末のアレがあっても、攻撃を変えてこないって、実は内部の人間の仕業なんじゃないの? って、思うわけで、阿川さんと切れてないことを知ってるからこそ、なんじゃないか。
まぁ、僕が考えそうなことくらいは、当然、上の人間や警察なんかは見抜いてるだろうけど。
――本城さん、マジでフォローお願いします。
右手に付けた、美輪からもらったブレスレット。実は俺好みだったりする。気が付けば、それに触れている自分がいる。美輪を想いながら、苛立ちを押さえつける。
「あ、遼」
そういう時に、会いたくない人と会うんだよな。
「おはようございます」
いつ見ても迫力の『おばさんパワー』の、阿川さんのマネージャーの赤根さん。
阿川さんと同い年だけど、あの阿川さんをうまくコントロールしてる彼女は、すごい。怒ると怖いけど。
「ちょうどよかった」
いやいや、僕は、よくないんですけど。
「あの件で相談があるんだよね」
あなたの、そのニヤニヤ顔の時って、いい話があったためしがない。
連れ込まれたのは、事務所の中でも一番狭い会議室。
「……で、なんですか」
「ああ。最近、兵頭と会ってないんだって?」
「会ってないって、別に会う理由ないし」
「それじゃ、困るんだよねぇ」
タバコを吸いながら、渋い顔する赤根さん。
女がタバコを吸ってる姿は、好きではない。だから、余計にこの人が苦手だ。
「困るって言われても」
「犯人、わかってるらしいんだけどさぁ」
なんだって。犯人わかってるって?
「まだ、決定的な証拠がないんだって。できれば、その嫌がらせが落ち着くまでは、もうちょっと兵頭とうまくやってよ」
……? なんだと?
今一つ、話が見えない。
「カモフラージュ、もうちょっと続けてってこと」
「いやいや、もういいでしょ。それに、僕にメリット全然ないし」
「何言ってんのよ。彼女のおかげで全国区になったんじゃないの」
顔を近づけてくるなって。煙草臭いし、鼻息荒いし。
……この人の、こういうところが嫌いだ。
「そのまま、付き合っちゃってもいいけど」
さらっと、爆弾落とすよね。このおばさん。
僕が美輪と付き合ってるというのは、スタッフの中では寺沢さんだけ。そしてあとは社長しか知らないこと。社長には付き合う前から、ずっと話してたけどね。
「阿川さんはいいんですか」
「阿川? あれはいいのよ。気にしてないから」
――気にしてない?
あんな溺愛してたのに? 最近は、全然会えてない、ってグズグズ俺に電話してくる人が?
赤根さんが言うことだけど、もしかして、阿川さん、この人に気を許してないのかもしれない、と、思った。
*** side 遼 ***
あれ以来、彼女との接点はまったくないんだけど。あの程度の牽制で、彼女がひいてくれれば、それはそれで万々歳。
だけど、それはうちの事務所が把握するより先に、雑誌に掲載された。
この前の病院へのお見舞いが、記事になったのだ。
もう、美輪の可愛らしい胸を痛める様なことは、やめて欲しい。
しかも、『交際継続中』って何。
もう映画の公開も終わってるし、これ以上、彼女とは関わりたくなんだけど。
「寺沢さん、これ、知らなかったの?」
事務所の中で、けだるげに雑誌を持ち上げ問い詰める。
「あぁ。わかってたけど、今は兵頭さんへの攻撃の犯人を捕まえることのほうが急ぎだからな」
いや。いやいや、僕の人生もかかってるんですけど。
マジで、美輪のほうが大事だし。
「阿川も了解済みだし」
――まぁね。僕よりも先輩のほうが大事ですよね。事務所的に。
でも。年末のアレがあっても、攻撃を変えてこないって、実は内部の人間の仕業なんじゃないの? って、思うわけで、阿川さんと切れてないことを知ってるからこそ、なんじゃないか。
まぁ、僕が考えそうなことくらいは、当然、上の人間や警察なんかは見抜いてるだろうけど。
――本城さん、マジでフォローお願いします。
右手に付けた、美輪からもらったブレスレット。実は俺好みだったりする。気が付けば、それに触れている自分がいる。美輪を想いながら、苛立ちを押さえつける。
「あ、遼」
そういう時に、会いたくない人と会うんだよな。
「おはようございます」
いつ見ても迫力の『おばさんパワー』の、阿川さんのマネージャーの赤根さん。
阿川さんと同い年だけど、あの阿川さんをうまくコントロールしてる彼女は、すごい。怒ると怖いけど。
「ちょうどよかった」
いやいや、僕は、よくないんですけど。
「あの件で相談があるんだよね」
あなたの、そのニヤニヤ顔の時って、いい話があったためしがない。
連れ込まれたのは、事務所の中でも一番狭い会議室。
「……で、なんですか」
「ああ。最近、兵頭と会ってないんだって?」
「会ってないって、別に会う理由ないし」
「それじゃ、困るんだよねぇ」
タバコを吸いながら、渋い顔する赤根さん。
女がタバコを吸ってる姿は、好きではない。だから、余計にこの人が苦手だ。
「困るって言われても」
「犯人、わかってるらしいんだけどさぁ」
なんだって。犯人わかってるって?
「まだ、決定的な証拠がないんだって。できれば、その嫌がらせが落ち着くまでは、もうちょっと兵頭とうまくやってよ」
……? なんだと?
今一つ、話が見えない。
「カモフラージュ、もうちょっと続けてってこと」
「いやいや、もういいでしょ。それに、僕にメリット全然ないし」
「何言ってんのよ。彼女のおかげで全国区になったんじゃないの」
顔を近づけてくるなって。煙草臭いし、鼻息荒いし。
……この人の、こういうところが嫌いだ。
「そのまま、付き合っちゃってもいいけど」
さらっと、爆弾落とすよね。このおばさん。
僕が美輪と付き合ってるというのは、スタッフの中では寺沢さんだけ。そしてあとは社長しか知らないこと。社長には付き合う前から、ずっと話してたけどね。
「阿川さんはいいんですか」
「阿川? あれはいいのよ。気にしてないから」
――気にしてない?
あんな溺愛してたのに? 最近は、全然会えてない、ってグズグズ俺に電話してくる人が?
赤根さんが言うことだけど、もしかして、阿川さん、この人に気を許してないのかもしれない、と、思った。
*** side 遼 ***


