帰りのHRが終わり、教室が賑やかになり始めていた。

窓の外では雪が降っている。

2月ももうすぐ半ばだが、春はまだ遠い。

いつもなら憂鬱なこの時期だが、ルナの心はウキウキしていた。

もうすぐ、ハルとデートだからだ。


(デート、どこに行こうかな……)


「ルナ、何ニヤニヤしてるんだ?」


「うわっ!?景太……!」


背後から突然声をかけられ、ルナはビクリと体をすくめた。


「まぁ、どうせハルのことだろ」


「ああ……はい」


「やっぱりな」


景太は得意気に笑った。


「……色々あったけど、吹っ切れたみたいでよかったよ」


「……うん」


本当に色々あった。ハルが天使だということ。婚約者がいること……


それでも


「決めたんだ。ハルと一緒に居るって」


「お熱いな」


「そういう景太だって」


全国大会が終わった後、景太と百合から付き合い始めたと報告を受けた。よそよそしかったのが嘘みたいに、2人は元に戻っていた。

放課後も、3人で帰る日々が戻ってきた。


「よかったね。仲直りできて」


「ああ。ありがとな」


そう言っている間に、百合がこちらに駆け寄ってきた。


「あ、百合、一緒に帰ろうぜ」


「ごめん、今日は用事があるから、2人で帰って」


「用事?」


「そう。ちょっと藤堂さんの家でね……」


「何かするの?」


「俺達も一緒に行っちゃ駄目か?」


「駄目ですわ」


菫が百合の後ろから顔を出した。


「女の子だけの、秘密の時間ですから」


そう言って微笑む菫を見て、2人は首を傾げた。


「さ、行きましょう。雨宮さん」


「うん」


2人は百合と菫が教室を出て行くのをぼんやりと見ていた。


「あの2人、いつの間にあんなに仲良くなったんだ?」


「さぁ……」


ルナは首を傾げた。