2人が向かったのは、白神涼介の病室だった。

病室に入ると、ハルと涼介が談笑していた。


「涼介君、ハル、こんにちは」


「あ、ルナ!と、この前の……」


「雨宮百合です」


「百合ちゃんか。ボクはハル。よろしくね」


ハルは百合に笑いかけると、辺りをキョロキョロと見渡して言った。


「今日は花里君がいないね」


「部活なの。ほら、大会が近いから……」


「そうか。そろそろ関東予選だもんね」


すると涼介がルナに向かって尋ねた。


「ルナも出るの?」


「僕はまだ出してもらえないかな……」


涼介の言葉に、ルナは苦笑いして言った。


「そっかぁ……」


落ち込んだ様子の涼介にルナは力強く微笑む。


「大丈夫だよ。早く試合に出してもらえるように、僕頑張るから」


「うん!……退院おめでとう、ルナ」


涼介はそう言って笑顔を見せた。


「いつでも遊びに来て良いんだからね?」


「うん、また会いに来るよ。約束する」


ルナはそう言って涼介とグータッチした。

その様子を見ていたハルもルナに向かって口を開く。


「ボクもまた君とお話ししたいな」


「あ、じ、じゃあ連絡先交換しようよ!」


ルナは慌ててスマホを差し出した。画面にはメッセージアプリのQRコードが表示されている。

またハルと話ができる……それだけで何だか嬉しかった。


「うん……もちろん」


ハルはそう言うとQRコードを読み取った。


「ちゃんと連絡するから!」


ルナは少し焦りながらそう言った。

──不自然じゃないだろうか。

しかし、そんな心配を余所に、ハルはあの日のようにニッと笑った。


「うん。楽しみにしてる!」