「な、なんで、私の名前…」

「聞いてたから。」

嘘だ、実は許嫁の話は『花衣』という苗字しか、聞かされていなかった。いや、俺が聞いてなかったのかも知れないけど…

「あ!そうですよね!すみません。えと…私は花衣 佑香です。」

あの日と変わらない笑顔。

「すみません。文月さん、嫌なんですよね?許嫁のこと…なのに、いきなり…」

なんで、そんなこと…いやだと思っていたのは、確かだけど、でもそれは、佑香の事を好きだったからで、
相手が佑香となれば、もちろん受けるに決まってる。

「いや…黎(らい)俺は、この話受けるから。」

小さい頃から、ずっと俺についてくれている
長谷部 黎 (はせべ らい)に告げる。

「えっ?凌、本当!?」

「ああ、」

いつもは、俺に対して、敬語を使ってくる黎が驚いたのか、凌と俺の名前を口にした。

「え?良いんですか…?」

俺がOKを出すと思ってなかったのか、佑香も驚いたような声を出す。