「馬鹿だなあ、海は。 レナは口でどう言ったって海と二人きりの方が本当は嬉しいんだよ。
昔から素直じゃないの。だから俺もわざわざお邪魔虫にはなりたくないって」
「やっぱりレナちゃんの事、ほっくんが一番よく知っているー
ちょっとジェラシーだよー……」
唇を尖らせてちょっと拗ねた振りをする海はやっぱり可愛い。 レナとは長い付き合いだ。
社会人になってからもよく仕事の話をする為に二人で飲んだりもした仲だ。 レナと居るのは居心地が良かった。
そんなレナを振った理由は、やっぱり一緒に居た時間が長すぎたせいで女性としては見れなくなっていたのと、俺とは合わないと思ったからだ。
人には包み込む空気感がある。 レナと俺は友人関係だから上手くいっていたのだ。
けれど付き合い始めたらその空気が変わる。 ぎくしゃくしてうまくはいかないだろう。 基本、自分はのんびり屋でおっとりとした性格なのだ。
’はぁ? それって付き合ってから知って行けばいい事じゃないですか?’ つい先日告白された青柳さんの事を思い出す。
確かに言われてみればその通りだったかもしれない。
けれど青柳さんも取り巻く空気感が俺とは合わないだろう。 合わない人間といると窒息したみたいに息が苦しくなる。
きっと青柳さんも数日俺と付き合ってみれば、思っていたのと違う。と過去の女性と同じ事を言い出すに違いない。



