■1■ *SIDE北斗* 印象に残る君。




『お母さんはね、北斗が居てくれて本当に幸せ。 お父さんとも出会えて一人じゃなくなった。
だからいつか北斗が大きくなったら北斗の大好きな人に出会えてもっと幸せになれるのよ。』

俺、阿久津 北斗の母親である阿久津 美里(ミサト)は家族という縁に恵まれた人とは決して言えなかった。

母方の祖父と祖母は俺が産まれるずっと前――母が中学生の時に交通事故で揃って他界した。 母には兄弟はいなかった。くわえて親戚とも疎遠で、中学の卒業までの一年間はほぼ知らなかった遠い親戚に預けられたらしい。

高校には行かずに働きだした。 まだ14歳そこそこで天涯孤独になってしまった彼女の人生は想像もできない悲しみがあったのだろう。


しかし母は18歳の時に当時アルバイトをしていたお弁当屋で俺の父である 阿久津 博人(ヒロト)と出会い父は母に一目惚れ。

猛烈なアタックの末に俺を身ごもり結婚した。

父は阿久津フーズファクトリーの跡取り息子だった為、当時身寄りのない母との結婚は猛反対されたらしい。

けれど父は自分の意思を貫き通し、母と結婚した。 それから母は専業主婦として家庭に入り
俺の知りうる限りずっと幸せそうな顔をした、誰にでも天使のような優しい女性だったと思う。 それは彼女の生まれ育った孤独な星に起因するものかもしれない。