聞いているこっちがむず痒くなる。 城田さんはドン引きしているんじゃないかと思いきや、父と母の会話を聞いてニコニコ笑っている。

俺は二人の仲の良さを知っているからいつもの話だが、嬉しそうに会話に加わっている彼女を見ると不思議だ。

惚気話なんて楽しいものじゃないのに――

お酒の入った二人は、昔話を城田さんにし始める。 それには少し焦る。

母はお世辞にも幸せな幼少期を過ごしてはいない。 中卒というワードもそうだけど、そういう話を聞いて城田さんが困ってしまうのではないかと心配したからだ。


「お母さんには、私が一目惚れをしたんだ」

「そうなんですか?…でも分かります。お綺麗な方だから」

「やだ、香ちゃんったら。私なんて今はただのおばさんよ。 香ちゃんの方がうんと可愛いんだから」

「いえいえ、滅相もありません。北斗さんにそっくりで…女優さんのようにお美しいです。」

城田さんの言葉はいつだって真っ直ぐで嘘がない。
得意げになる父と、ニコニコと花のように微笑む母。 和やかな時間が流れていく。