「えー、香ちゃんK大卒なの~?すごいわすごいわ~」
「いえ、そんな事はないんですよ。私は勉強しか取り柄がなかったので」
「そんな事ないのよぉ。それはすっごくお勉強を頑張ったって事でしょう?偉いわ……。
私なんて中卒だもの。何の取り柄もないただの専業主婦だし」
母が’中卒’という言葉を出したのは、城田さんにとってとても意外だったのだろう。
そりゃあそうだ。 阿久津フーズファクトリーの社長の妻だ。 それなりの家柄の女性だとは誰もが思う事だろう。
でも母は、なりたくって中卒になった女性ではない。 当時の彼女の家庭環境からは中学を出てから働く事しか選択はなかった。
「そうなんですか。けれど勉強が全てではないと私は社会に出てから実感しています。
私なんてK大卒なのにちっとも仕事が出来なくって、毎日上司に叱られっぱなしです。
それに…専業主婦尊敬します。 こんなに素晴らしい料理が作れることも尊敬ですし
家族の事を家で守っているんですもん。」
「ええーそう?そう言われたら嬉しいなあ。
でも香ちゃんのご両親は立派な方なんでしょうねぇ。娘さんをこんなに立派に育てるなんて」



