いやいや、気合いいれすぎだろう。 と思わず突っ込みたくなるほどの料理の品数だ。
しかも和洋折衷。なんつーバランスの悪い食事だ。
しかしこれは母が歓迎している証拠の一つでもある。 実家を出て数年、たまに家に帰って来ると母は俺の好物を作りまくる。
「お母さん、さすがにこれは作りすぎでは…」
「だって北斗の連れて来る女の子の好きな物が分からないんだもの。 たくさん食べてね~」
城田さんは母の用意してくれた料理を沢山食べてくれた。 …無理しているんじゃないだろうか。
けれど沢山食べてくれる城田さんに母はとても嬉しそうで、二人で他愛のない話をしているのに安心した。
何となくだけど、城田さんと母は気が合うと思っていた。 いつもニコニコして少しだけ天然ボケな母。 けれど両親を早くに亡くし苦労をしてきた。
阿久津家に入った後も貧乏性は抜けない、と節約が趣味のような人で
社長の妻だといっても偉ぶる所が少しもなく気さくな母は、周囲の人誰からも好かれた。 代わりに若い頃は阿久津家の人間関係で苦労してきたと思うが、それを俺には微塵も見せなかった。
城田さんもふんわりとしていて優しい空気をまとっているから、母は絶対に気に入ると思ったのだ。
お喋りは母に任せ、二人の話に相槌を打つように聞き入る。



