ニコニコ笑顔の母とは対称的に、城田さんは玄関を開けた瞬間ガチガチになってしまい
その場で90度に体を曲げて、母へ向かいゆっくりとお辞儀する。 思わず可笑しくてブッと吹き出してしまう。

それでも彼女はえらく真剣だ。

「初めまして!城田 香と申します! 本日はよろしくお願いいたします!」

やたらと気合いの入った挨拶が玄関に響き、ここは取引先かよと思わずつっこみたくなる。
母は母で顔を上げた城田さんの両手をぎゅっと握りしめ、目を細めて優しく微笑む。

「まあ、なんて礼儀正しいお嬢さんなの! 北斗の母です。 北斗がいつもお世話になっております~」

「いえ!こちらこそ北斗さんをはじめ、阿久津フーズファクトリーの阿久津社長、会社にもお世話になっております!」

だから固いって…。

「ええー?もしかして城田さんってうちの会社の社員?」

「はい。私は阿久津フーズファクトリーの営業部に今年から新卒として採用されまして
お世話になっております。」