「さすがは阿久津フーズファクトリーの社長さんが住むお家ですッ……
私の実家とは大違い…」

「城田さんの? そういえば実家は九州の方だっけか」

「ええ。うちは平屋で台風が来たらすぐ飛んでいきそうなお家でしたので…
うわあ、すっごい…。いいなあ、北斗さんが羨ましい。こういうお家に住むの、昔からの夢だったんです!
わー、すっごいすごい。」

どうやらドン引きして見えたのは勘違いらしい。 羨ましがられるような家ではなかったけれど、彼女はまるで大好きなスイーツを見つめるように目を輝かせていた。

実家にはあらかじめ連絡を入れていた。 紹介したい人がいる、と。
あいにく父はまだ会社から帰って来ていなかったが、母がいつも通り出迎えてくれる。

紹介したい人が居る、と電話で告げた時からそれは女性であるとある程度予想はしていたらしい。
ニコニコ顔でいつもより上機嫌で出迎えられて、正直照れくさかった。

「いらっしゃい。待っていたのよ~~~上がって、上がって~」