ええええ! と、内心で悲鳴を上げていると、男がぴくりと反応したので息を止める。
いっそこのまま存在を消したい……
(多分何もしていないと、思うけど……)
自分の服装を見るに、スーツのジャケットは脱いでいるが、その他はストッキングまで着たままだ。……人様の寝床に何だか申し訳がないが。
こういう場合はお礼を言って帰るのが礼儀なのだろうか? 経験が無いので分からない……けど、うん! よく寝てるようだし黙って帰ろう!
そろそろと男の様子を見ながら部屋を移動すれば、唐突にぱちりと開いた瞳とかち合った。
「……」
どっどっどっ……
心音である。
口から心臓が飛び出しそうな程、心臓がやばい。
「……おはよう」
「お、おはようございます!」
もう、こうするしか無いだろうと判断した私はその勢いのまま男性に向かって土下座した。
「ご迷惑をお掛けして申し訳ありません!」
私の土下座に男性は驚いた様子だったけれど、吹き出した声が降ってきて思わず顔を上げてしまう。
くすくすと笑う男性は、寝起きながらもなかなかのイケメンさんで思わず固まってしまった。
少し茶色がかった髪に切長の瞳。
眉はきりりと上向いて意思が強そうだ。
(……寝起きドッキリだ……)
ん……でも、この顔どこかで……?
ぽやんと惚ける私をどう思ったのか、少し生真面目な顔をしてから男性は気分はどうだ? と聞いてきた。
思い当たるのは昨夜の飲酒。
……確かに飲みすぎた……気がする。



