(嬉しい──)
涙が溢れそうで、思わず唇を噛み締めた。
(愛莉さんに目を奪われた訳じゃ無かった、のね)
ほっと息を吐いてしまう。
「……好きって、雪子さんを?」
「当たり前だろ」
驚きに満ちた眼差しを向ける愛莉さん。
けれど先程から愛莉さんがどんな表情を見せても、河村君の態度は揺るがない。
それが私にどれ程ありがたくて、切なく響くか、彼はきっと知りもしないのだろうけれど……
呆れるように溜息を吐き、河村君はそっと私の肩を抱いた。その行為に頬どころか頭が丸ごと茹るように熱くなる。
「嘘よ!」
けれどそれを見た愛莉さんは直ぐに叫んだ。
「だって愛莉さんの家には、智樹がいるんだから! あなたは騙されているのよ!」



