「余計なお世話だよ」
冷たい声音に愛莉さんの身体がぴくりと揺れる。
「……え?」
その口元が僅かに引きつったように見えた。
「邪魔しないでって事なんだけど……?」
そう言って前髪を掻き上げる仕草が様になっていて、つい見惚れてしまう。
「ち、違っ。私は、あなたの事を思って……」
けれど尚言い募る愛莉さんに、河村君は変わらぬ様子で口を開いた。
「あのね、どうして赤の他人の言う事を、大好きな彼女の言葉より優先すると思うの?」
その言葉に愛莉さんは目を丸くする。
私も瞳を瞬いた。
いやいや、『彼女の設定』なのだ。
当然かもしれない。けれど、これは私には特別な意味を持つ。
──彼女を幼馴染より優先する。
正確には私は河村君の彼女では無いし、愛莉さんも彼の幼馴染ではない。
(だから私のこの感情は私情を混在した、おかしな事……)
きっと河村君が私を優先するのは、私の方が彼と少しばかり面識があるからだろうと言う事も分かっている。
これは彼にとって、何でも無い行為の一つに過ぎない。のに……



