信じられないと言わんばかりに瞳を見開く愛莉さんは、どこか歪で……なんというか、台本通りに進まない相手に戸惑っているような……
けれどすぐに意を決した風に生真面目な顔を作り、河村君をぎゅっと見据える。
「こんな事を言うのは筋違いだって分かってます。けど、」
前置きのように一言断ってから、再び目に涙を溜める。
「雪子さんは、学生時代から私がいるって知りながら、私の恋人と付き合っていたんです。友達だって言われてたけど、二人はいつも一緒で……同じ学校に通えなかった私の事を、笑って……いたのも知っています」
伏せる睫毛が頬に長い影を落とした。
そこを涙の雫が伝い、落ちる。
それが彼女を更に悲しげに、か弱く見せて。
(また、嘘……)
付き合っていたのは事実だけれど。愛莉さんと付き合ってるなんて知らなかった。知ってたら付き合っていなかった。それに、
(笑った事なんて、ない)



