「河村くん……?」
つい声を掛ければ、河村君は、はっと意識を取り戻したようにこちらを振り返った。それから、励ますような笑顔に自然と元気付けられて。
どきりと口から飛び出しそうな音を、続く言葉と一緒に飲み込んだ。指先が微かに触れた後、そのままそっと手を握り込まれ、心臓が飛び出しそうだったから。
「西澤さん、だっけ? 俺の彼女を困らせないでくれないかな?」
まだばくばくと胸が落ちつなかい中、いつもの調子を取り戻したらしい、河村君がにこりと告げた。
「えっ」
ぽかん、という表現が合ってるような、愛莉さんの表情。
私も揃ってぽかんと口を開ける。けど、
(あ、ああ。設定か……)
一つ気持ちを落ち着ける。
……一応慣れたけど、こういう場面でまで彼女設定で、いいのだろうか……恥ずかしくて、嬉しい……けど……
「付き合ってるって、どうして……何で雪子さんなんかと……」
けれど愛莉さんの科白に我に帰る。照れている場合じゃなかった。



