『彼女はそんな人じゃない』そう言った智樹には、彼女はさぞ美しく、天使のような人なのだろう。
(でも私には……)
質の悪い悪女に見える。
(──だから、いいのよ)
仕方がないじゃない。価値観が違うのだから。
大好きだった元彼の顔が少しずつ朧げに、やがて薄れて消えていく。
あの人と、一緒にいられる筈が無かったのだ。
戦慄きそうになる口元を引き結び、再び愛莉さんを見る。
けれど先程まで河村君を縋るように見上げていた顔は強ばり、その瞳は戸惑いに揺れていた。
何故かは、振り仰いだ河村君の顔を見て合点がいく。
彼は先程から変わらない、色を無くした顔で、温度を感じない眼差しで、じっと愛莉さんを見つめていた。



