急いで言葉を紡げば、言い訳がましく聞こえるのは何故だろうか……
 事実、愛莉さんはどこか確信を得た、そんな表情でこちらを見つめ返す。

「親友だなんて言い張って智樹に張り付いてた事、こっちはちゃんと知ってるんだから!」
「……」

 ……親友じゃなくて付き合ってたのだけど……
 でも──
 何故か言いたく無いと思った。

 どうして私ばかり振り回されないといけないんだろう。余計な話をして拗れたら、二人の事情に巻き込まれて、また辛い思いをするだけじゃないか。

 何より私がもう智樹を好きじゃ無いのだ。
 二股なんて酷い事をして、何食わぬ顔で都合の良い環境を作り上げていて……こんなところまで……

(愛想も、尽きたわ)
 だから、もう関わらないと決めて。肩掛けの鞄の紐をぎゅっと握りしめた。
「何の事ですか?」

 はっきりと告げたその声は、けれど自分のものとは違い、低く良く通るそれで……