『ごめん、俺やっぱアイツじゃないと……愛莉じゃないと駄目なんだ』

(忘れたいって、忘れたって言ってたくせに……)

 恋人だった男の最後の言葉。
 ずっと引っかかってた過去の女性。
 気にしちゃ駄目だって、そんな事してたら、あの人に不誠実だっていつも言い聞かせてきたけど……

 私の勘は正しかった───

(くそう……)

 私は過去の女に負けたのだ。
 一緒にいた時間は何だったのだろう……
 彼が彼女を求める確信の時間だろか。
 私は真剣だったのに……

(ずっと私の事なんて見て無かった……)

 本当は、付き合ってる時も、時々感じた違和感。
 別れたから、今はもう解禁していい気持ちは、向き合うとこんなに辛い。

 そんな最悪の金曜日の夜。
 ぎゅっと目を瞑る。
 腕時計を見れば時刻は深夜を回っていた。



 ──だから言ったのに



 どこかで聞いた事のあるような声が、私の意識に入り込み、ゆったりと暗闇に沈んで行った。